[ バチェラー:忍 ] 僕の運命 [ 19日目 ]
前回:[ バチェラー:忍 ] 二人きりの休暇 #2 [ 18日目 ]
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本日の予定
本日は快晴。
最後のローズセレモニーにふさわしく、雲一つない空が広がっていました。
こころちゃんはダンスをしながらプリムちゃんとおしゃべり。
お友達であり、恋敵であり、今日まで勝ち抜いてきた2人には積もる話もあると思います。
そんな中、すっと立ち上がったプリムちゃん。
どこに行くのかと思えば、
休暇疲れで遅く起床した忍の元でした。
最後のひと押しかプリムちゃんから「私を選んで」と伝えられたかのようです。
こころちゃんはサンドバッグで体系維持に余念がありません。
気持ち腹筋が割れてきたような…?
プリムちゃんに誘われてケッグ・スタンド。結果は成功です。
自律が強かったので3日目から撤去していたものを最終日なので引っ張り出して来ました。
こころちゃんも成功。ドリンクのおかげで愛を感じたようです。
忍は筋肉もないのに意外と力持ち。それか、プリムちゃんとこころちゃんが軽すぎるのかも?
15時まではもう少し時間があるので、2人に「ありがとう」の意味をこめてハグをすることにしました。
まずはこころちゃんから。
ソロデートでは一日忍を独占して過ごし、迎えたローズセレモニーではずっと独走状態だったプリムちゃんからトップを奪いました。ビンタ数も最多の6回、これはもう出場者さんの誰にも破られることはないでしょう。
嫉妬して怒るぐらいに好きになってくれたこころちゃん、ここまでありがとうございました。
お次ぎにプリムちゃん。
嫉妬で通過順位の下がった13日目のローズセレモニー以外は、一番に薔薇を受け取っていました。プリムちゃんからビンタをされた忍が『心の痛み』を覚え、距離を取った時期もありましたがそれももう消えています。
忍しか見えていないんじゃないかと思うぐらいに一直線なプリムちゃん、ここまでありがとうございました。
ここで15時ちょうど。
忍は一生を添い遂げる相手を決めなくてはなりません。
この19日間は愛情と癒やし、それに伴う痛みがありました。
ひとえに相手を深く愛した結果であり、優劣を付けられるものでは決してありません。
全てが素敵な思い出として心の中に刻まれています。
忍は過去に1度は愛した許嫁に裏切られ、『運命』などないのだと諦めきっていました。
しかし、バチェラーとしての日々を振り返り一つひとつを掬い上げてみれば、確かに「あるのかも知れない」と思えるものばかり。
真っ直ぐすぎるほどに想いを言葉で、態度で示してくれた2人。
忍が選んだのは、一体どちらになるのでしょうか──?
いつもローズセレモニーが行われる裏庭に呼び出された2人は、花で彩られた噴水に横並びに腰かけ忍が現れるのを待っていた。
「ねぇ、プリムちゃんもドキドキしてる? こころ、もう心臓が爆発しちゃいそうなのっ! どうしたらいいと思う!?」
「深呼吸して落ち着いて、ね? ……こっちまで緊張してしまうわ」
大好きなお友達へと心情を少し大げさに話すこころに、プリムヴェールはなだめながらもそっとため息を吐いた。
同じように選ばれるのか、選ばれないのか気を張っているというのに、どこかおどけたようなこころが羨ましく感じる。
そこからにじみ出る愛らしさも垣間見て、淑女として厳しくも大切に執事から育てられたプリムヴェールは、正反対なのだと尚更そう思った。
「わぁ、ほんとだ! プリムちゃんの言う通り! なんだか頭もすっきりした気がする。やっぱり、持つべきものはお友達なんだね!」
「大げさね。……ふふ、貴女といると悩みなんてちっぽけなものに思えてくるわ」
プリムヴェールの落ち着き払った空気に、こころは憧れをもってひときわ目を輝かせる。
お互い好きな相手の前では周りが見えなくなるけれど、友達のこの距離感が心地良い。違うからこそ、認め合える絆がそこにはあった。
一方、薔薇を渡す相手を心に決めた忍だったが、まだ動き出せず座ったままだ。
「……僕を忘れてやいないかな?」
今日まで残った2人の仲が良い姿に割って入ることも出来ず、忍はここまで届く笑い声を聞きながら機会をうかがっていた。
それからまた一時間とちょっとの間、夢中になって話していたこころとプリムヴェールはようやく忍に気付き、顔を見合わせてどちらからともなく立ち上がる。
「……プリムちゃん、今日までありがとう。一緒にいてとっても楽しかった」
「ええ、私もよ。……忍くんは譲りたくないけれど、こころちゃんと出会えて良かったわ」
こころは言い忘れる前にと感謝を口にして、プリムヴェールも本心からそれに応えた。
性格も、育った環境も、種族でさえ違う2人が仲良くなれたのは、長いようでいて短いこの時間を共に過ごして──同じ人を深く愛したから。
段々と近づいて来る靴音に、期待と不安が入り混じる。
渡される薔薇はもう、一輪だけ。
「──プリムヴェールさん、僕の最後の薔薇"も"受け取って貰えますか?」
暗に、ファーストインプレッションローズを忘れてはいないと忍は告げていた。
「……っ、もちろん!」
顔には出さなくとも不安だったプリムヴェールは、忍の前でしか見せない全てを取り払った表情で差し出された薔薇を勢いよく受け取る。
執事が見たら淑女ではないと叱られてしまうかも知れないけれど、プリムヴェールにはもう忍しか目に映らない。
(悔しい……! こころもプリムちゃんが素敵なのは分かってる。でも……それでも、こころの王子様は忍くんが良かった……!)
長くプリムヴェールの独壇場を目にし続け、独り占めできた一日をかけてやっと忍を振り向かせたとこころは思っていた。
最後に約束したキスが贈られるものだと期待で高鳴っていたこの胸の痛みは、しばらくは癒えそうにない。
2人の姿をまた見続けるのは難しくなって、こころは顔を逸らした。
「偶然だけで片付けるのが惜しいぐらい、君の想いには負けたよ」
今朝でさえ不意打ちのように現れてから離れずそばにいる直向きな行動は、その実ひねくれている忍から見て疑いようもない。
「……私は、これを『運命』だと思っているわ」
プリムヴェールはこの言葉に忍が瞬きの短さだけ顔をしかめることも、過去に何かあったことも勘づいていた。
そして、それが何よりも心の底から気に入らない。
過去も未来も、もう忍の全てはプリムヴェールだけのもの。
「だって、この私がそう思ってるのだもの! ……間違いなどないでしょう?」
自信に満ち溢れたその宣言に、根負けした忍は確かにと笑った。
プリムヴェールはひた隠した本音を微塵も見せることなく思う。
これは、抗う必要のない『運命』以外の何物でもないのだと。
「ある意味、これも『運命』なのかもね。……いや、何でもないよ。今度は『永遠』なんてないと口にしてしまいそうだ」
口を引き結んだプリムヴェールに気付いて、しばし目を泳がせる。
皮肉が過ぎたかと取り繕った忍は墓穴を掘ったようだった。
「真っ暗な夜でも、眩しい朝でも、鬱陶しい昼にだって……私は、ずーっと、永遠に……忍くんだけを愛しているわ」
怒ったように見えたプリムヴェールからの暖かなキスと、一音一音愛を込めた囁きに瞼をそっと下ろす。
初めて心地良い質量の想いを受け取った忍は、胸が震えて涙が出そうだった。
少しの間だけプリムヴェールに待ってもらい、こころへと向き直る。
「こころさん、待たせてすまなかったね。今までありがとう……そして、これからも友達として仲良くしてくれないかな?」
「……いいの? こころ、もう終わったらさよならかと思っちゃった」
こころの率直な物言いに苦笑する。
「そんな薄情な奴だと思われてたとはね」
「まだちょっと複雑だけど……忍くんもこころのお友達! プリムちゃんと幸せになってね!」
祝福の言葉まで送られて、先ほどまでの気まずさもどこかへと消えた。
最後に笑顔で顔を見合わせて、一人で前を向き歩いて行ったこころを見送る。
優しく純粋な彼女から送られた愛情と、ラウンジのピアノの音色を思い出した忍は、その幸せを願わずにはいられなかった。
「さっきは何を話していたの? ……ふふ、嘘よ。少し妬いただけ」
こころへの別れのハグにすら嫉妬したプリムヴェールを愛しさを込めて見詰める。
このままでいたいけれど、まだ忍は伝えなければいけないと、ゆっくりと重ねられた手を引いた。
「これからも、僕と一緒にいてくれるかい?」
「……ええ! 決して離れたりしないわ!」
想像するよりも力強いプリムヴェールの返事に、忍は小さく笑う。
「それに、性急で悪いのだけど」
色良い返事を聞いた後で断られる訳がないとは分かっているが、妙な緊張感に深く息を吸った。
「──僕と、結婚して下さい」
仲睦まじい両親が遠い昔に交わした婚約指輪と同じ物を、プリムヴェールに差し出す。
「喜んで! ……全部、忍くんの好きにして」
受け取ったプリムヴェールの無防備な言葉に、むず痒さが勝った。
「そんな簡単に言っては駄目だよ。……僕は存外根に持つ質なんだ」
忍の腕に飛び込んだプリムヴェールは、嘘偽りなく晴れやかに言う。
「良いの! 私は、忍くんだからここに来たのよ? 何だって許すわ。……貴方が私を見続けてくれる限り、何だって!」
「へぇ、言うね。……言質も取れたんだ、もう逃げられると思わないでね?」
「忍くんこそ、私から離れられると思わないでね?」
言葉の応酬すら甘く、忍が小さい頃に思い描いたあの両親の姿と重なる。
一度絵の具で塗り潰したはずの理想が、この腕の中にあった。
名残惜しくも宝物をそっと下ろせば、急に恥ずかしくなったのかプリムヴェールは家の中へと駆け込んでいく。
大胆な事を言う割には可愛らしいなと、その姿が見えなくなるまで忍は目で追いかけていた。
選んだつもりが最初から選ばれていたなんて、何て拙い笑い話。
忍の傍らにプリムヴェールという『希望』がある限り、変わらない幸せがこれからも続いていく。
──確かに、これは運命だった。
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これにて、忍のバチェラーチャレンジは終了となりました。
最後に忍の伴侶となったのは、ストラウド・プリムヴェールちゃんでした!
こころちゃん、プリムちゃん、そして忍も今日までお疲れさまでした。
15時時点での関係とメモリーがこちらです。
こころちゃんの方は忍から『消えない恨み』と、こころちゃんにはメモリーが半分まで減った『深い愛に満たされて』に『心の痛み』があります。
プリムちゃんは忍の『心の痛み』も消え、同じ『深い絆』とプリムちゃんに恋のメモリーが2つ付いていました。
決めるのに2人ともこれまでの思い出を書き出してみたのですが、ほぼ接戦に加えてビンタの嵐。最後まで迷いに迷いました。
こころちゃんに迫る勢いでプリムちゃんも4回のビンタ。出場者さん全員の数を含めると…17回? 入院するレベル。
平然としていたのは忍のやせ我慢だった???
包帯ぐるぐる巻きで結婚式に出る忍を想像して笑ってしまいました。
さて、長々と要らないことを綴りそうなのでこれで終わりといたします。
書きながら砂糖の分量を間違えたなとは思っていますが、忍のバチェラー最終日はいかがでしたでしょうか?
ベーゼとはまた違うようにと苦心して逆にシンプルな構成にはなりましたが、本編はここまで。
お付き合いいただきありがとうございました!
嫉妬してビンタしてしまう程に最後まで忍を深く愛してくれたこころちゃん、そしてこころちゃんを参加させて下さったひつじさん、大変にありがとうございました!!!
次回の20日目は、プリムちゃんとの結婚式の様子をお伝えさせていただきたいと思います。
[20日目:最終回]へ続きます。
※次回は、4/18のアップデートから発生していた顔バグの影響で結婚式を延期していたため、プレイと記事作成に4日ほどのお時間をいただき、順調にいけば5月4日の更新となります。
20日目ですが20日目ではなくなるので大変申し訳ありませんが、それまでお待ちいただけますと幸いです。
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