[ バチェラー:ベーゼ ] 俺の幸せ [ 19日目 ]
前回:[ バチェラー:ベーゼ ] 二人きりの休暇 #2 [ 18日目 ]
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本日の予定
最終日にダイエットさせているベーゼから、おはようございます。
早いもので19日目。
今日という日をもって、ベーゼと一生を添い遂げる相手が決まります。
パパチャリくんとラースちゃんがこの家でダンスするのも見納めですね。
始まった時はとても賑やかだったのに、今は流れる音楽の方が大きくて寂しさがこみ上げてきます。
最後に誰も利用しなかったサウナに一緒に入る事にしました。
初めてラースちゃんの左腕にタトゥーも発見。可愛いハートのタトゥーですね。
ガン見しないでいただける???
パパチャリくんみたいに「サウナ気持ちいいなー」の可愛らしい目ではありません。
会話中に相手の顔を見るのが癖みたいなベーゼが、もの言いたげにラースちゃんを見詰めています。
あの後、庭園の噴水で居眠りをしたベーゼ。
2日間続けて休暇に出かけたので少し体力が黄色になっていました。
煮え切らない態度のベーゼは、まだどちらにも一言も発していません。
そこにラースちゃんが頬にキスをしに来て、ちょうど15時に。
「あたしはあんたを愛してる。あんたが決めたことに従うよ」と、そう言われた気がしました。
挙げればキリがない楽しい非日常も、今日でおしまいです。
ここで過ごした19日間は、ベーゼにとって掛けがえのないものになったことでしょう。
ベーゼが思う幸せは、以前ならば『ゲニーの幸せ』でしたが、優しさに触れて少しずつ変化してきました。
気持ちが揺れて、心にもない言葉を投げかけたこともあります。
それでも明るく接してくれて、嫉妬で泣かせても好きだと態度で示してくれた2人。
そんなベーゼが選んだのは、一体どちらになるのでしょうか──?
ここはタルトサの「ラ・コッピア・セレーナ」の一室。
ロマンチックな場所などベーゼには全く思い浮かばず、下見も兼ねて結婚式場で答えを告げることにしました。
怠け者の弟なら絶対にしない身だしなみを整えて、複雑に入り混じった心を必死に落ち着けようとしています。
別室で待たされていた2人は、あんまりにも遅いベーゼにしびれを切らし話し合っていました。
「ねぇ、ラースさん。今から別々の場所に行ってさ、ちょっとだけベーゼを驚かせちゃおうよ! 俺は外で景色を見てくる」
「のった! あたしは式場内を探検してくるよ」
そんなこととは露知らず、やっと決心したベーゼは鏡の前で伝えるべき言葉も忘ないようにと反芻していました。
「……クソッ、ゲニーみてェに頭のデキが良かったらなァ」
ひとり毒づいて、2人の待っていると思っていた部屋を覗いてから頭を抱えました。
窓から辺りを見回して、やっとその姿を見つけて胸が痛みを訴えます。
階段を早足でかけ降りて、首を絞められた時のように出ない声を無理やりあげました。
「──おい! なに勝手に外に出てンだ!?」
振り向いたパパチャリは悪びれた風もなく笑っていました。
「そっちが待たせすぎただけだって! それに、驚いたでしょ?」
「帰られたンじゃねェかって……ンなおどろきいらねェよ」
気が抜けてベーゼが笑えば、パパチャリの方が少し緊張した表情に変わります。
「……で、俺にはプロポーズ? それとも……別れ話?」
期待と、あるいはその逆の答えを知ろうとするパパチャリの声は僅かに震えていました。
「ああ……別れ話」
2人分の沈黙に海鳥の鳴き声やさざ波の音が響いています。
いつもならここで押し黙って相手の反応を待ちますが、ベーゼにはまだもう少し、パパチャリに大事なことを伝えなくてはなりません。
ちょっとした時間稼ぎに場所を変えようと、橋の向こうへと渡りました。
いつもならば重い空気を茶化すパパチャリでも、静かにベーゼからの話しの続きを待っています。
そんな姿に勇気を得て、見送ってきた出場者たちから少しずつ少しずつ優しさを受け取って自覚した、この想いを口にすることにしました。
「やっとわかったンだ」
「俺はずっと誰かに……手をのばしたらスグつかんでくれるみてェな、そんなフツーでいいから……愛されたかったンだ」
それは、小さい頃に両親から愛されずに育ったベーゼの中でくすぶり、ずっと目を背け続けてきたものです。
ただ、「傍にいたい」と言えば寄り添ってくれるように、「好きだ」と言えば同じ気持ちだと返してくれるように。
そんな「普通だ」と一蹴されそうなことで──愛されたいだけなのだと。
鼻で笑われるかも知れないとパパチャリからの反応が怖くなって顔色を伺えば、想像とは違いほっとしたような、柔らかな声が返ってきました。
「そっか。急に嫌われたのかと思ってびっくりしちゃった! ほら、俺さ。ベーゼと2人きりだと、なんか素直になれなくってさ。それで嫌われたのかなーって!」
「そンなワケねェだろ。好きだった、つーか……今もそンなに変わってねェよ」
ベーゼの答えに満足したのかパパチャリは破顔して、別れのハグの最後に一つだけそっと耳元で教えてくれました。
「ラースさんは、結婚式場の外のウェディングアーチのところ。……俺よりも首をながーくして待ってるから、行ってあげなよ!」
すっかり陽も傾いていることに気が付いて、駆け出したベーゼを止める声はありません。
ラースらしき人影を目にして足が絡まりそうになりながら、一秒でも早くたどり着こうと走ります。
「すまねェ。ずいぶん待たせちまった」
「……分かってる。あんたを待つって事は、そういうことなんでしょ」
近付いても動揺していないラースに見透かされていたと悟り、ベーゼは観念して歩みを緩めました。
「じゃ、いわなくても大丈夫だよなァ?」
「あたしからの返事も要らないならどうぞ?」
ベーゼの冗談だと分かって微笑むラースに、抱きしめた腕の力が強まります。
こんな風に、甘えても突き放さない相手が欲しかったのだと、ベーゼは改めて思いました。
「これ、受け取ってくれるか? あんた……じゃねェ、ラースだから受けとって欲しい」
「そんなの、断る訳ないじゃん」
感極まったベーゼを拒絶せず受け入れてくれる温もりに、愛おしさだけが募ります。
長いながい口づけの後、はたと伝え忘れていた言葉をベーゼは思い出しました。
「あー……ついでで悪ィが、俺のそばに一生いてくれるか?」
「それ、ついでに言うこと?」
吹き出したラースを待てば、ベーゼにとって最高の返事が返ってきました。
「当たり前じゃん……!」
一度家に戻って荷物をまとめたラースは、庭園に足を運んでいました。
明日の結婚式が済めばすぐにここから出て行かなくてはなりません。
今の内にローズセレモニーで何度も訪れたこの場所を、忘れないように目に焼き付けておこうと思ったのです。
そこに、ラースを探してベーゼもやって来ました。
仕切りにポケットに隠したソレの形をなぞり、緊張した面持ちです。
「……なァ、ちょっといいか?」
ラースが声につられてベーゼの方へと振り向けば、ひざまずいたその姿に驚き、次ぎに取り出したものに胸を押さえました。
「一生とか言っといてなンだが、渡すのがおくれたンだけどよ。……これも、受け取ってくれねェか?」
「俺と、結婚してほしい」
ベーゼから差し出された、夕日が反射して輝く指輪にラースは息をのみました。
「あんたから指輪は貰えないと思ってた」
「……そこまで困ってねェよ」
確定されていた口約束で胸が満たされていただけに、ラースは婚約の指輪まで贈られるとは思っても見ませんでした。
ベーゼとしてはバチェラーが始まるほんの少し前に用意して隠し持ってはいたのですが、大事にしまい込みすぎて帰ってから渡す手筈になっていたのです。
「ラースの返事は?」
照れ隠しに返事を急かしたベーゼに、ラースは突き動かされる衝動のまま腕の中に飛び込みました。
「ベーゼと一緒に幸せになってあげるよ……!」
「うお! あぶねェだろーが!」
ひとしきり笑い合った後に、慈しむような優しい眼差しでラースは言います。
「……本当に、幸せになろう。お互いにね」
対等に愛し合える相手を見つけた喜びに、ベーゼはいつか言われた通りの──涙を流すのでした。
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これにてベーゼのバチェラーチャレンジが終了となります。
そして、最後にベーゼが選んだのは、ジャックマン・ラースちゃんでした!
初日で怒鳴った2人が好意を寄せて最後まで残ってくれるとは夢にも思いませんでした。
途中まではパパチャリくん優勢で進むのかなと思っていたので、ラースちゃんがダークホースのような存在でしたね。
ベーゼがこんなにも「キス魔」だと分かったのもラースちゃんのお陰。毎回キス待ちする度に爆笑してたのは良い思い出です。
パパチャリくん、ラースちゃん、ついでにベーゼも今日までお疲れさまでした。
上記SSは15時になった時のものです。これが本当に決定打。
17日目に見極めるとか言っていましたが、休暇中はどちらにもベーゼが自律で誘惑していて甲乙つけがたかったので「今日はじめて誘惑 or キスした方」を選ぼうと決めました。
その時を待っていたら、ラースちゃんから時間ギリギリにキスされたので決定いたしました!
パパチャリくんが誘惑をしていたら、あの橋の上でパパチャリくんにプロポーズする予定でした。夕日が沈む橋の上もロマンチックかなと。
頬にキスする前にもラースちゃんからキスされていたので、本当に愛されているなとも感じています。
ベーゼの愛し方が「そこで意地悪!?」みたいに変なので、今後はラースちゃんがキスで黙らしてくれそうで一番平和なエンドの気がいたしますね。
左下がパパチャリくんとラースちゃんとの15時時点でのゲージです。
嫉妬でベーゼへの誘惑を止めてしまったパパチャリくんは休暇中も誘惑がなく、これはもう見限られのかも知れないなとも考えていました。以前の嫉妬後にもパパチャリくんは拗ねたのか誘惑したくなる気分に戻るまで長い印象を持っていたので、もう少し日数が長ければ行動が変わっていた可能性はありそうです。
対してラースちゃんは愛情の減った分を休暇中にほとんど取り戻していたので、ラースちゃん側からも嫉妬で泣いても同じくらいの熱量で好きだと、変わらず好意を持たれていたんだろうなと思っています。
プロポーズ後に初『深い愛に満たされて』のメモリーもついていたので、お互いに幼い頃から苦労をしてきた2人が、将来を誓い合って手探りだった愛情を確信できたのかなと嬉しくもあります。
あとベーゼの願望が『ソウルメイト』なのでSSの通り親友もなりました。
まだ終了ではないのにダラダラと書き連ねてしまいそうなので、ここで一旦終わりとさせていただきます。
ベーゼからの侮辱にも負けず最後まで成長を傍で見守ってくれたムードメーカーのパパチャリくん、そしてパパチャリくんを参加させて下さったまえがみさん、大変にありがとうございました!!!
そして、次回の20日目はラースちゃんとの結婚式の様子をお伝えさせていただきたいと思います!
[20日目]へ続きます。
※次回は3/22の更新となります。
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